徳川園のこのごろ 新年を迎え

 あけましておめでとうございます。

 今年は「亥(己亥)」年です。亥はいのししの象形文字からで、根ざす、きざすという意味があるようです。諸説あるとは思いますが、ある文献には「本来の十二支は動物ではなく植物の生長の様子を表すもの」であったと書かれていました。田の神、作物の神とも言われているようです。亥は十二支の最後なので、植物の生命力が種子の中に閉じ込められ、いずれ果実になる状態で、何か起こることの予感される年でもあるそうです。私共も、大きく変遷する社会情勢を見据えながら、培った基盤を大切に、更なる飛躍への足がかりとなることを願い皆様への発信を心がけていきたいと思います。本年もどうぞよろしくお願い致します。「一人はみんなのために みんなは一人のために」

 毎年その年の世相を一文字で表す漢字、昨年は「災(サイ、わざわい)」と決まり、清水寺の森清範貫主が力強く揮毫されました。この催しは、一年を振り返り漢字一時に込められた奥深い意義に再認識を持つことを目的として、12月12日「いい字一字」、「1(いい)2(じ)1(いち)2(じ)」の語呂合わせからこの日に決定されたものだそうです。文字や言葉の持つ深い意味を慎重に読み解き、丁寧に皆様にお伝えしていきたいと思います。

 今年は猪年(亥)にあたり、以前からずっと気になっていた「猪目」に注目してみました。猪目とは建造物から身近な器物までにみられるハート型に似た紋様の事で、これが猪の目に似ていることからの呼称です。この紋様は日本の伝統的なもので、奈良時代の遺物、古くは古墳時代の倒卵形鐸にもみられ、昔から魔除けとされていました。また招福の意味もあるようで、額縁や飾り金具などにも用いられています。連想してみてください。“猪→ボタン→徳川園”という事で、新年は徳川園から始めます。新年に相応しい門松がお迎え、そしてじっくり黒門を見回してみると、懸魚や釘隠しなどの中に猪目はあります。時には、ちょっと立ち止まって探してみてはいかがでしょうか。

 猪の肉色は赤く(子猪はピンク)“猪鍋”をボタンの花のように盛りつけることから’牡丹鍋“と呼ばれるようになった、ということです。牡丹と繋がったところで、徳川園の冬ボタンに会いに出かけました。藁囲いの中で、妖艶に優しく微笑みかけてきます。年の初めのひとときを、静かで長閑な陽射しの中でお楽しみ下さい。
(木造建築用語辞典、語源辞典、広辞苑など参照)

    黒門の猪目   脇長屋の懸魚(猪目)
  ここにもボタンが・・・   優しく微笑んで
  冬の陽射しの中で整列  コブクザクラとボタンの競演
 七福神(ボタン)と観仙楼   凛として(鎌田藤)

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