名古屋市 市政資料館見学記

 昼が一番長くなるという夏至。“夏に至る”と書くようにいよいよ本格的な夏へと向かいます。遅れた梅雨入りも影響してか各地で警報が発令される降雨が続いています。そんな梅雨の晴れ間に「名古屋市市政資料館見学」に行ってきました。現在NHKで放映中の「虎に翼」の撮影現場になったことも影響して行われた「ガイドツアー」は、40人募集に対し600人を超す応募があったそうです。

 「名古屋市市政資料館」は現存する最古の控訴院建築です。8カ所設置されたものの、現存するのは名古屋と札幌のみです。煉瓦造りの3階建て、延べ床面積6700㎡という大きな建物です。大正12年の関東大震災以降、耐震性の問題から煉瓦造りの建物は新築されなくなり、この建物が最後のものになります。ここは名古屋城北側にある名城公園の飛び地になるため、門には「名城公園」と記されています。時にはじっくり丁寧に巡ってみるのはいかがでしょうか。

 1984年(昭和59)国の重要文化財になりました。指定は3箇所(建物外観・中央階段・会議室)です。1985(昭和60年)から創建当時の状態に戻す改修工事が行われました。

 外観は正面中央にドーム屋根の塔屋を設けたネオバロック様式。赤(煉瓦)・白(花崗岩)・黒(天然スレート)、窓格子の緑、窓枠の黄色を組み合わせた荘厳な建物が目を惹きます。車寄せの上部に取り付けられている金の装飾は公正な裁判を意味する「神鏡と神剣」を組み合わせたものです。

 今回は普段は見られない中庭を見学することもできました。中庭から見る塔屋、受刑者が作った煉瓦と職人が作った煉瓦の対比なども見ることができました。

 なんといっても圧巻は中央階段室です。階段の手すりは大理石で、これは岐阜県美濃赤坂産の大理石とのことで、アンモナイトなどの化石を見ることもできますよ。余裕があれば探してみてください。

 中央階段室の両端にある柱は大理石(下側)か代理石仕上げ(マーブル塗り)となっていて職人の匠の技を見ることができます。触ってみると下の大理石の部分は冷たい感触があります。触って体感してみてください。床は「リグノイド」塗りの床が施されていると初めて伺いました。

 階段正面のステンドグラスは罪と罰が均衡する天秤、天井は公明正大を表す「日輪」がデザインされています。ホール両側の窓は結霜ガラスが嵌まっています。これは貴重なアンティークガラスだそうです。一つ一つが大正時代の貴重な遺産のようですね。

 3階会議室は、公式行事などに使用された部屋で意匠を凝らした造りです。調度品などは図面や写真から復元されたもののようです。いずれも当時の匠の技が随所に見られる素晴らしいものです。天井は漆喰塗り、壁は下の部分に板を並べて貼った羽目板張りとなっています。

 名古屋市の公文書館としての役割を担い、大正ロマンを彷彿させながら次世代へ着実に歴史を紡いでいるようです。 
 運良く見学会に参加出来、朝ドラを視聴している私にとっても有意義なひとときでした。

左右対称の均整の取れた建物
中央階段
天井には「日輪」のステンドグラス
手摺りの意匠
希少な結霜ガラス
大正ロマンが蘇りそうな・・
復元された椅子
神鏡神剣

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