徳川園のこのごろ

 立夏も過ぎ、梢を渡る風も瑞々しさを感じます。こんな風を若葉風ともいうようですが、躍動する燕の姿にも初夏の風情が見られます。

「夏来ても ただヒトツバ(一つ葉)の 一葉かな(松尾芭蕉)」と詠われてもいますが、石垣一面をヒトツバが覆い、その青葉が優しく道案内をしてくれています。虎の尾のせせらぎに気を取られ、気づかずに通り過ぎてしまいそうですが、時にはどっしりと居座る岩にも目を向けてみてください。
 ボタン、フジ・ナンジャモンジャなどの華やかさ、鮮やかな若葉に代わって、今は“草分け風”がゆらす小さな花々が可憐に語りかけてくれますよ。白い花が多いので目立ちませんが、新緑とのマッチもまた粋なものです。探してくださいね。

  今回は、楚々と咲く小さな花や、萌えだした新芽を探してみましょう。
 龍門橋の上池(右手側)では、柚木灯篭の側で黄色のヒメコウホネが水面に青空を取り込みながら優雅に咲いています。
 虎仙橋脇のスダジイの幹にはテイカカズラが、風車のような形をして白い花を咲かせ、幹に確かな居場所を決めてゆらゆら風に踊っています。
 里山周辺ではホオズキも白い花をつけています。やがてお盆が近くなると赤い実?を一斉につけますよ。
 初春に咲いたウメやアンズ、ハナモモは小さな実を付け、着実に大きくなっていきます。根元ではヒヨドリやスズメ等が食餌をする長閑な風景が広がっています。
 山のゾーンへ向かう道はまさに今、「目に青葉 山ホトトギス・・」の風景で、小鳥のさえずり、新緑の香りに元気をもらえそうです。

 龍仙湖では、色とりどりのスイレンが華麗に咲き、あの有名な、モネのスイレンを想像させてくれます。常夜灯、湖面、鯉、観仙楼が並ぶ景色は、絶好のシャッターチャンスになっているようです。
 ガイドの途中で「この花はどこにありますか」と尋ねられ、「○○ですよ、近くにこんな花も咲いていますよ」の会話、「見つけました」「良かったですね」、「今日はゆっくり2周しました。こんなに見るところがあるなんて知らなかったわ。また来ます」の言葉の交換が、とっても嬉しく頬を心地よい風が通り抜けていきます。時には「森林浴」を楽しんでみては如何でしょうか。
 当会では毎週金曜日に定時ガイド(午後1時から)を行っております。お気軽に声をかけてください。
(歳時記。植物図鑑など参照)

  スダジイの幹でゆれて   ほのかな香り(クスノキ)
   烏葉千両(芽吹き)     クロロウバイ
   湖面を彩って・・   葉陰で咲くホオズキ
そよそよと・・(ユキノシタ) 甘い香りの含笑花(園外公道)

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