「菩提樹の 緑有縁(うえん)に 蔭與ふ(あたふ)(山口誓子)」
菩提樹の甘い芳香に誘われて東区寺社巡りをしてみました。
菩提樹は「仏教三大聖樹 注1」の一つで、この木の下でお釈迦様は悟りを開かれたと言われていますが、それは印度菩提樹と呼ばれる桑科の植物で、今回訪ねた寺の木とは異なります。
印度菩提樹は中国では育たなかったため、それに似た葉を持つ中国原産のアオイ科シナノキ属の落葉樹を「菩提樹(西洋菩提樹)」と呼ぶようになったとのことです。12世紀頃に臨済宗の開祖「栄西」が中国から持ち帰った木(菩提樹)だそうです。寺院の境内に植樹されている理由がわかりますね。毎年6月頃に咲く徳源寺の菩提樹を楽しみにしていますが、なるほど納得です。(徳源寺は臨済宗)この木は寺院の境内に植えられていることが多いようです。今回は東区の4寺を巡ってみました。
⓵徳源寺(新出来1)の菩提樹は本堂前、中門横に大木が聳えています。この木は東区の名木にも指定されています。毎年、楽しみに観に来られる方もいて、花談義が繰り広げられることもあります。風に揺れると花びらが舞い散り、地面は黄色の絨毯が敷き詰められます。森閑とした境内に甘い香りが漂います。仏殿に横たわる涅槃像にも届いていることでしょうね。
②了義院(徳川2)の菩提樹は、戦禍の跡の残るお釈迦さまを横から優しく包み込むように佇んでいます。爽やかな甘い香りに誘われて近づくと、多くの淡黄色の小花をつけています。なぜかホッとする空間です。この神社は、神仏習合の名残りでしょうか戦禍の残る鳥居も同居しています。昔は高台にあり風光明媚な場所で松尾芭蕉の句碑も残されています。今と昔を往復してみてはいかがでしょうか
③長久寺(白壁3)の菩提樹は、前庭中央に庚申塔を包み込むように陽光に照らされ、木漏れ日を穏やかに包み込んでいました。頭の尖った石碑に浮き彫りのいかにも勇ましいお顔をして、うずくまった鬼の上に立ち三匹の猿を従えておられるのが、この庚申まつりの本尊「青面金剛」の尊像です(長久寺資料より)
④遍照院(泉2)の菩提樹は、門脇に本堂に向けて芳しい匂いを漂わせてそっと咲いていました。道路脇のお地蔵さんにも和みの空間を提供していることでしょう。穏やかな日常がありました。
余録:徳川園外(南側、案内板横)、駐車場(メーグルバス停留所)にも芳香を漂わせ、道路には淡黄色の小花が敷き詰められ「あれ?」と上を見上げると咲いていますよ。散る花と芳香が存在を示しているようです、気づきが嬉しい菩提樹でしょうか。
開花時期に多少のずれはありましたが、楽しい花巡りでした。この他にもまだあるかもしれませんが、時には心身を解放してゆったり・まったりの寺社の花巡りはいかがでしょうか。
注1:⓵無憂樹(ムユウジュ) ②印度菩提樹(天竺菩提樹) ③沙羅の木(沙羅双樹 サラソウジュ)
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