立秋も過ぎ「立秋の 雨はや一過 朝鏡(中村汀女)」と詠われているように、風の流れや日の光、雲の動きに微妙な変化が見られる・・のは、秋を待ち焦がれる願望のせいでしょうか。もちろん8月のイメージは、蝉時雨や厳しい暑さ、お盆を前に毎年報道される「戦後○○年」ではないでしょうか。そんなことを考えながら訪ねた神社で百度石(注1)を見つけ、“その昔どんな思いで人々はこの石に願いをかけたのだろう?”と頭をよぎりました。
最初に立ち寄った神社で、いきなりその形の違いに気づきました。まだ他にも色々あるのだろうかと疑問が湧き、東区内の社寺を丹念に巡って見ようと思いました。すると新たな出会いや発見があり、楽しみ方も意外に多岐に亘り、どんどんと広がることに気づきました。それぞれの社寺の歴史や謂われと共に、石造物をたどって見るのも楽しいのではないでしょうか。
百度石をじっくりと見ると、円柱や四角柱など様々な形があることが分かりました。四角柱頭部は平らであったり、先が尖っていたり微妙な変化をしています。そして彫られた文字も様々で、丁度境内におられたお庫裏様や宮司様にお尋ねしましたが、特に形や字を指定したという記憶は無いそうです。“みんな違って みんないい”ですかね。
全国的にみると、数を数える為に上部に数え玉、算盤玉が付いているものや、お寺さんのご本尊様との関わりで様々なタイプがあり、地域の習わしなども反映されていることもあるようです。今回は東区内の限られた範囲でしたが、少し範囲を広げるとまた新しい発見があるかも知れませんね。
百度石建立が元和2年と思われる古い観音院(泉3)、明治の片山神社(芳野町2)、含笑寺(東桜3)、大正の松山神社(泉3)、東充寺(東桜2)、片山八幡神社(徳川2)等々を歩きました。須佐之男神社(出来町3)では普通60〜80㎝といわれる高さが、125㎝もあり、幅も21㎝で区内随一だと教えていただきました。円柱形の冨士神社(東桜1)など特徴があることを知りましたが、全ての社寺に設けられるわけではなく、存在しないところも幾つかありました。この寺院めぐりの道すがら、街路樹の木陰で一息入れつつ、目に入る花々は一服の清涼剤になってくれました。
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注1:広辞苑では、頼み事を叶えてもらうため、社寺に参りその境内の一定距離を100回往復し、その度に拝することとあります。古くから日本の民間信仰であり、文献的初出は吾妻鏡の記述から、鎌倉時代初期にはお参りがあったようです。石は火災や災害にも強く歴史の生き証人になってくれることも多いようです。
観音院室寺(風化も散見) | 冨士神社(円柱形) |
含笑寺(篆書体・てんしょたい) | 神明社(隷書体) |
七尾天神(頭部は丸み) | 須佐之男神社 |
路地に彩り | モミジアオイ |
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