今年の干支は「申」ということで、新春の拙文に干支に事寄せて、大広間の地袋に描かれた絵についてご紹介しました(注1)。これは、あくまでも私見で、願望と推測の範囲のものでしたが、これについて、驚くべき意外な発見がありました。
なんと、この地袋の絵は隅田八幡神社に伝わる国宝の「隅田八幡神社人物画像鏡(注2)」裏面の人物を抜粋、これを彩色したものだと記されていていたのです。初めて聞く神社名、何処にある?どんな鏡?いつ頃の物?・・・と、未知との遭遇にワクワク・ドキドキ、調べてみました。文献を探している内に、少しずつ絡まった糸がほぐれ始めてきました。神社は和歌山県にあること、この鏡は国宝の「人物画像鏡」であること、紀伊名所図会に模写されていることなどが分かってきました。調べを続けていると徐々に、遙か古からの脈絡、承継が僅かに見えてきたような気がしました。
佐助邸の襖絵には「好文作」と署名、落款がおされていますが、多くの仲間が手を尽くして調べるのですが、「好文さん」を見付けることができないのです。描かれている別の襖絵は、あの歌川広重の近江八景によく似ていたり、金粉を使った素晴らしい作ばかりです。京都からみえた襖絵師さんのお話では、「これだけ描ける人は凄い人ですよ」とのことでしたが・・・。現在も様々な方面から調べていますが、未だ判明しておりません。もう少しこの解明作業を継続していきたいと思っています。
今年は、佐助邸洋館が造られてから100周年になります。そんな折り、思いがけない発見や気づきがあったことに、不思議な巡り合わせを感じます。
秋には記念の展示会も予定されており、現在準備中です。これからもご来館いただいた皆様にそっと寄り添いながら、少しでも喜ばれるご案内が出来るよう心掛けていきたいと思います。(参考資料:日本の国宝、紀伊名所図会)
☆佐助邸には火・木・土、10時から15時30分まで常駐し、ご案内させていただいております。お気軽にお声かけください。
地袋に描かれた絵 | 人物画像鏡(写真,東京国立博物館) |
左下には署名、落款 | 堅田の浮御堂(右端) |
注1:こちらからご覧ください
注2:国宝人物画像鏡は東京国立博物館に寄託されている(日本の国宝参照)
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