徳川園のこのごろ「重陽の節句」

 徳川園では、今、「重陽の節句」に合わせて瑞龍亭に「室礼」が飾られています。室礼とは、人生の節目に「季節を盛る」「言葉を盛る」「心を盛る」ことを言い、日本人がその長い歴史の中で育んできた「暮らしの文化」なのです。

 9月9日は「重陽の節句」、五節句の(注1)の一つで「菊の節句」とも呼ばれる中国から伝わった風習です。菊の花は不老長寿や若返りの効果があると言われるおめでたい花とされ、邪気を払う霊草と信じられていました。平安時代は貴族を中心に季節の移ろいを知らせる節句として広まっていきました。庶民に季節の行事として広く行われるようなったのは江戸時代のことです。

 現在大河ドラマで「光る君へ」が放映中ですが、紫式部の歌集「紫式部集」には「菊の花 若ゆばかりに袖ふれて 花のあるじに 千代はゆづらむ」という歌を詠んでいます。若返りの効果もあると考えられ、宮中の女性たちには「菊の着せ綿」と言う風習があったようです。平安時代には前日の9月8日に菊の花を真綿で覆って菊の香を移し、その翌日の朝に露に湿ったこの真綿を顔に当てて、若さと健康を保とうとする行事がありました。また菊の花を食べる行事も流行ったと言われていますが・・・。

 皆さんも健康と長寿を願って1000年以上前に思いを馳せて「重陽の節句」を祝ってみてはいかがでしょうか

 徳川園に目を向けてみますと、まだまだ続く暑さと朝夕の涼風に「花たち」も戸惑っているようですよ。夏の花も青空に向かって意気揚々と咲き誇っています。素晴らしい生命力を感じ元気をもらえますね。

 反面、秋の気配を素早く察知してススキやハギ、キキョウなど秋の七草が咲きはじめ季節を感じながら秋へと誘ってくれます。龍仙湖、中の島周辺では、ノシランやミニハマナデシコがそっと道案内をしてくれます。見つけてくださいね。湖畔では六角柳も風雅に風に揺れじっと見入っている人もいます。運が良ければカワセミやトンボ、蝶にも出会えますよ。ゆっくり観察してみてくださいね。新発見があるかもしれませんよ。

四睡庵や茶室には扇風機や風鈴が取り付けられ「お・も・て・な・し」の心が息づいています。大曽根の瀧や龍門の瀧では心静かに水音を楽しんでみてはいかがでしょうか。“癒しの空間”を十分味わえると思います。
 ゆったり、まったり季節の移ろいを感じてみてください。

 毎週金曜日の10:00~15:30(随時)ガイドを行っております。お気軽にお声掛けください。

 注1:1月1日(人日)、3月3日(上巳)、5月5日(端午)、7月7日(七夕)、9月9日(重陽)

室礼(重陽の節句)
タカノハススキ
百日紅は青空に映えて
龍仙湖の移ろい
赤蜻蛉も一休み
秋の七草(キキョウ)
楚々と咲くタマスダレ
ツリバナの実も秋に向けて

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